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最高裁判所第一小法廷 昭和43年(あ)1566号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人本人の上告趣意は、憲法三一条違反をいうが、その実質は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

なお、職権により調査するに、原判決が維持した第一審判決の判示事実をその挙示の証拠に照らし合わせると、第一審判決は、被告人が第一審判決判示一(一)(1)ないし(5)の銃四挺および弾丸実包約三三発を自宅事務所の一カ所に収納して所持していた事実を認定して判示したものと認められるから、被告人の所為のうち、銃四挺の不法所持の点は銃砲刀剣類等所持取締法違反の包括一罪を、弾丸実包約三三発の不法所持の点は火薬類取締法違反罪を、それぞれ構成し、両者は刑法五四条一項にいう一個の行為で数個の罪名に触れる場合にあたるものと解すべきである。ところが、第一審判決は、銃一挺ごとに一個の所持罪が成立し、これらの各所持罪および弾丸実包約三三発の不法所持罪は併合罪であると解して法律を適用しているのであつて、この点に関する限り、法律の適用を誤つたものといわなければならず、原判決もまたこれを看過しているのである。しかし、第一審判決は判示一(一)(1)ないし(5)の犯罪事実のほかに、これと併合罪の関係にある同(二)の犯罪事実をも認定しており、処断刑に変りはなく、その他本件事案に徴すれば、右の違法はいまだ原判決について刑訴法四一一条を適用すべぎものと認めるには至らない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。(大隅健一郎 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)

参考 一審判決認定事実の関係部分

被告人は、法定の除外事由がないのに拘らずⅠ市Ⅰ町○○○番地自宅事務所において

(1) 昭和三四年九月頃より同三八年一二月九日頃まで猟銃水平二連銃(無鶏頭)一挺(証第一号)を

(2) 昭和三五年四月頃より同三八年一二月九日頃まで猟銃自動五連銃(ブローニング)一挺(証第四号)を

(3) 昭和三五年一〇月頃より同三八年一二月九日頃まで猟銃五連銃(ボルト式)一挺(証第三号)を

(4) 同三八年四月頃より同年一二月九日頃まで猟銃上下二連銃(無鶏頭)一挺を

(5) 同年一二月九日頃弾丸実包約三三発を各所持したものである。

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